今回はオープンアクセス出版社の「Hindawi」に掲載された論文をご紹介します。
======================
中等度虚血性脳卒中患者に対するビタミンD3の単独大量投与における効果の検討
【目的】
ビタミンD不足は虚血性脳卒中患者において高頻度に認められ、生存率の負の予測因子であると言われている。中等度の虚血性脳卒中患者においてビタミンD3の大量投与がNSEレベル、NIHSS、BIスコアリングシステムに及ぼす効果を評価した。
【方法】
この研究は前向き二重盲検化無作為(RCT)試験である。2020年4月〜2021年3月までビタミンD欠乏症(血清25-OHビタミンDが30ng/mL以下)を有する中等度虚血性脳卒中患者(NIHSS 5-15点)を介入群と対照軍に無作為に割り付けた。介入群の標準治療に加えて60万IUのビタミンD3の単回筋肉内注射を行った。NSEとNIHSSは介入前と介入後48時間に評価された。BIは退院後3ヶ月間モニターした。
【結果】
570人の患者が対象となり、最終的に41 人の患者が研究を完遂した。患者特性に関しては年齢が対照群で高かったこと(p =0.04)以外は両群間で統計的な有意差はなかった。48時間後、NIHSSスコアは介入群で有意に低かったが(p = 0.008)、NSEレベルには有意差はなかった(p = 0.80)。退院3ヵ月後、BIは介入群で有意に高かった(p = 0.03)。
【結論】
ビタミンD3 60万 IUの単回投与は、中等度虚血性脳卒中患者において機能的な結果(NIHSSおよびBI)においては神経保護効果を発揮しうるが、神経損傷に関連するバイオマーカー(NSE)においては有意差は見られなかった。
======================
【コメント】
いくつかの観察研究では、ビタミンD欠乏症の患者ではNIHSSに基づく脳卒中の重症度が悪化し、脳卒中後の機能的転帰が悪くなることが示されています。こちらの正確な機序は完全には解明されていませんが、今回の結果からも虚血性脳卒中に合併したビタミンD欠乏症の患者さんにはビタミンD投与により筋力の向上、転倒の減少、骨折リスクが減少することでその後のQOL改善が期待できそうですね。
スマートクリニック東京では、脳梗塞・脳出血の後遺症治療を行っております。詳しくは以下のページをご覧ください。
記事監修
-
東京慈恵会医科大学卒。
慶應義塾大学での勤務を経て、株式会社ZAIKEN設立。
臨床、訪問診療、企業活動など様々な分野に従事。
2020年よりスマートクリニック東京院長。
最新の監修記事
- ALS2024.01.23臨床研究に関する情報公開について(オプトアウト)
- ALS2023.12.13ALS(筋萎縮性側索硬化症)上清液投与 case3
- 再生医療2023.11.01上清液治療の安全性について(製造から投与)
- ALS2023.10.26ALS(筋萎縮性側索硬化症)上清液投与 case2