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COLUMN

コラム記事

【論文紹介】脳梗塞/TIA発症後の患者に対するアトルバスタチン投与の有効性(NEJMより)

論文紹介

2022.11.30

今回はNew England Journal of Medicineより発表された論文をご紹介します。

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脳梗塞/TIA発症後の患者に対するアトルバスタチン投与の有効性
High-Dose Atorvastatin after Stroke or Transient Ischemic Attack

N Engl J Med. 2006 Aug 10;355(6):549-59.

 【背景】

スタチンは心血管疾患のリスクが高い患者の脳卒中発症率を低下させるが、直近で脳卒中を起こした人や一過性脳虚血発作(TIA)後の脳卒中発症リスクを低下させるかどうかはまだ確立されていない。

【方法】

トライアル開始前1〜6ヵ月以内に脳卒中またはTIAを発症し、LDLコレステロール値が100〜190mg/dL(2.6〜4.9mmol/l)で、冠動脈疾患がない患者4731例を、アトルバスタチン80mg/日投与群またはプラセボ群に無作為に割り付けた。主要エンドポイントは初回の非致死的または致死的脳卒中とした。

【結果】

トライアル期間中の平均LDLコレステロール値はアトルバスタチン投与群では73mg/dL(1.9mmol/L)、プラセボ投与群では129mg/dL(3.3mmol/L)であった。フォローアップ期間の中央値4.9年の間に、アトルバスタチン投与群では265例(11.2%)、プラセボ群3では11例(13.1%)に致死的または非致死的脳卒中が発生した(95%信頼区間0.71-0.99;P = 0.03)。アトルバスタチン投与群では虚血性脳卒中が218件、出血性脳卒中が55件であったのに対し、プラセボ群では虚血性脳卒中が274件、出血性脳卒中が33件であった。主要な心血管イベントのリスクの5年間の絶対的減少は3.5%であった(ハザード比0.80;95%信頼区間0.69-0.92;P=0.002)。全死亡率は、アトルバスタチン投与群で216例、プラセボ群で211例と同等であり(P=0.98)、重篤な有害事象の発生率も同様であった。肝酵素値の上昇はアトルバスタチン服用患者でより顕著であった。

【結語】

冠動脈疾患の既往のない直近の脳卒中発症またはTIA患者において,アトルバスタチン1日80 mgは,出血性脳卒中の発生率をわずかに増加させたものの,虚血性脳卒中および心臓・血管系イベントの全発生率を減少させた。

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【コメント】

医師が解説|論文紹介|スマートクリニック東京こちらは少し古い論文になりますが、今行われているスタンダード治療の根拠となっている論文です。
昔は脳梗塞を起こしたら入院してバイアスピリン(血液サラサラ薬)やワーファリン(抗凝固薬)が出されていましたが、今ではスタチン(高コレステロール治療薬)も同時に開始することが当たり前になっています。

ポイントはこの研究で対象となっている集団のように、もともと脂質異常症がない患者さんでも、一度脳梗塞やTIA(脳梗塞の前触れ症状)を起こした人にスタチンを始めることでその後の再発や心血管疾患までも予防できるということです。

今回とは別の話にはなりますが、もともと糖尿病治療薬として開発されたSGLT2阻害薬も冠動脈疾患(心筋梗塞)のリスクを下げることがトライアルで示されていて、最近の循環器の世界では心不全患者さんの利尿剤としてフロセミド(ループ利尿薬)だけでなくSGLT2阻害薬を好んで開始する先生も多いです。
もともと別の治療薬として開発された薬が実は別の疾患の発症予防などに効果がある事例はたくさんあります。ここら辺の話が医師の教科書に載るのは効果が示されてからだいぶ先です。医師が日々英語論文を読んで勉強したり、学会に参加して著名な先生方の講演を聞いて勉強したりすることが日々の診療を行う上で大事になってきます。

スマートクリニック東京では、脳梗塞・脳出血の後遺症治療を行っております。
詳しくは以下のページをご覧ください。

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記事監修

スマートクリニック東京 院長 瀬田 康弘
スマートクリニック東京 院長 瀬田 康弘
東京慈恵会医科大学卒。
慶應義塾大学での勤務を経て、株式会社ZAIKEN設立。
臨床、訪問診療、企業活動など様々な分野に従事。
2020年よりスマートクリニック東京院長。

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