脳卒中にはさまざまなタイプが存在するため、その違いについて気になる方も多いのではないでしょうか。
また脳卒中の症状を把握しておくと、早めの医療機関への受診につながり、症状の重症化を防げます。
本記事では、脳卒中における病態や症状、検査法、治療法をタイプ別に解説。脳卒中を予防するために、大切な取り組みもお伝えします。
脳卒中について不安をお持ちの方は、ぜひ参考にしてください。
脳卒中とは脳の血管に障害が起きて、運動障害や感覚障害などのさまざまな症状が現れる病気です。
生命に関わることもあるため、症状が現れたらすぐに病院で適切な処置を受ける必要があります。
大きく分けると脳の血管が詰まって血流が悪くなる虚血タイプと、血管が破れて流血する出血タイプがあります。
虚血タイプには、脳の血管が詰まった脳梗塞があり、さらに3つのタイプに分かれます。
出血タイプに該当する病気は、脳出血とクモ膜下出血です。ここでは、それぞれの病態や特徴について説明します。
脳梗塞
脳梗塞は脳の血管が詰まった状態で、ラクナ梗塞やアテローム性脳梗塞、心原生脳塞栓症に分かれます。
ラクナ梗塞
「ラクナ」とは小さな空洞の意味で、ラクナ梗塞は脳の深部にある細い血管が詰まって脳梗塞になった状態です。
詰まりやすくなった箇所に、血の塊である脳血栓などができて脳梗塞を発症。症状が現れない場合は「無症候性脳梗塞」と呼ばれます。
ラクナ梗塞は動脈硬化が原因で発症することも多いため、コレステロール管理や禁煙、ストレスケアなどの心掛けが大切です。
アテローム性脳梗塞
アテローム性脳梗塞とは、血管にコレステロールがたまり、そこにできた血の塊が血管に詰まって発症する脳梗塞です。
脳細胞に栄養や酸素を運ぶ太い動脈に、コレステロールがたまって血管が詰まります。
アテローム性脳梗塞になると、腕や脚に力が入らなくなったり、体の半分が動かなくなったりします。またろれつが回らない状態となり、言語障害にも見舞われることも。
本格的な症状が現れる前に、一過性脳虚血発作(TIA)を発症する場合があります。
一過性脳虚血発作とは、脳梗塞の症状が数秒~数時間だけ現れてすぐに、正常な状態に戻る症状です。血管が詰まった箇所に応じて、症状や後遺症が異なります。
心原生脳塞栓症
心臓で作られた血栓が脳へ運ばれ、詰まることで脳塞栓を発症した状態です。心臓に心房細動が起こると、血液がよどんで血栓が作られることがあります。
心房細動とは不整脈の一種で、心臓がけいれんしたように細かく震える症状です。加齢に伴い増加しますが、症状に気づかない場合も多いようです。
生活習慣の影響を受けるため、食事や飲酒量の管理、禁煙などへの心がけが大切でしょう。
脳出血(脳溢血)
脳出血は脳溢血(のういっけつ)とも呼ばれます。脳の深部にある細い血管で出血した状態です。
加齢によりもろくなった血管から、出血することが多いです。
クモ膜下出血
クモ膜下出血は、くも膜と呼ばれる脳を覆う薄い膜の下で出血した状態。脳出血とは異なり、出血する箇所は脳の表面を通る太い動脈です。
脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)と呼ばれる血管にできた瘤(こぶ)が破裂して出血します。生命に関わるため、早めの処置が重要です。
一過性脳虚血発作の種類
一過性脳虚血発作とは一時的に脳に血液が流れなくなった状態。
一過性ですが、早い時期に脳梗塞へと移行することもあるため注意が必要です。
「塞栓性」「血行力学性」「心原生塞栓性」の3タイプにわかれます。
塞栓性
頸動脈などの太い動脈で作られた血栓の一部が血液で運ばれて、脳の末梢血管に詰まって神経症状が現れます。
神経症状には、運動障害や構音障害、感覚障害など通常の脳梗塞と類似した症状が現れる点が特徴です。
血管に詰まった血栓が溶けると症状が消失しますが、残る場合は脳梗塞になります。
血行力学性
血行力学性の場合は、一時的な低血圧に見舞われた際に、脳梗塞に類似した症状を呈します。
もともと脳の主幹動脈が狭くなっている場合に運動障害や言語障害などを発症しますが、血圧が通常に戻ると症状も回復します。
心原性塞栓性
心原生塞栓性では心房細動などの不整脈が原因で、心臓内に血栓ができ、それが血流で運ばれ脳の血管に詰まることで発症します。
心原性脳梗塞と同じ病態で、血栓がすぐに溶けた場合に一過性脳虚血発作に分類されます。
脳卒中の検査法の種類
脳卒中の検査法は次のとおりです。
- CT検査
- MRI検査
- MRA検査
- 超音波検査
- 血管造影検査
- SPECT検査
各検査法について、分かりやすく説明します。
CT検査
CT検査は、レントゲンで撮影された画像をコンピューターで解析して、それを輪切りにし脳卒中の有無や種類を判定する検査です。
脳梗塞は、発症後1日が経過して映し出されるのに対し、脳出血は発症後すぐに映し出されます。
MRI検査
磁力で脳の断層画像を映し出して、病態を分析する検査法です。
CTよりも鮮明な画像を得られ、脳梗塞と脳出血ともに発症直後の画像描出が可能。
MRIを使った特殊な検査では、通常では映し出すことの難しい最近発症したラクナ梗塞を映し出せます。
そのため、脳ドックなどで無症候性脳梗塞を早期発見するために利用されることがあります。
MRA検査
頭部MRAは、脳の血管を撮影する検査です。脳の血管のみを描出し、血管が膨らんだり狭くなったりしていないかといった異常を調べます。
くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤や、脳梗塞につながる血管の狭窄部などを調べます。
超音波検査
超音波検査は、動脈硬化の有無や進行の程度を調べる検査です。超音波を検査の対象部位に当てて、反射を映像化して血管の内部を調べます。
エコー検査とも呼ばれ、リアルタイムに血管の状態を観察できる上に、人体への負担が最も少ない点が特徴です。
脳へと通じる血管の状態を観察するための頸動脈超音波検査や、頭蓋骨内の脳動脈の状態を観察するための経頭蓋超音波検査などが行われます。
血管造影検査
血管造影検査はカテーテルと呼ばれる細い管を血管内に通して、そこから造影剤を注入して検査します。
動脈瘤や動静脈奇形、血流の異常を見つけるための検査に用いられます。
動静脈奇形は、胎児のころに先天的に発生する脳血管の異常で、血管の塊ができ、動脈の血液が静脈へと流れ込む病気です。
若年層の脳卒中は、脳動静脈奇形が関係することもあります。
SPECT検査
SPECT検査は、脳梗塞や脳出血の部位の特定と、その広がり方を観察するために行われるRI検査の一種です。
微量の放射線を出す検査薬を投与して、検知した放射線を元に脳血管の状態を画像化します。
SPECT検査では、体の断面図の観察が可能。またCTやMRIの検査とは、異なる特徴もあります。
CTやMRIが解剖学的な所見に基づき、体の状態を観察するのに対し、SPECT検査では生理学的な所見に基づいた病態の把握が可能です。
なおSPECT検査で使用される放射線は、人体に害を及ぼさないほどに微量なものです。
それぞれの脳卒中の治療における特徴
病気のタイプや病態、脳卒中発症後の経過時間により、脳卒中の治療法が異なります。
ここでは、脳梗塞と脳出血、クモ膜下出血に対して行われる治療法を
解説します。
脳梗塞
脳梗塞の治療は、緊急性を要します。なぜなら、早く処置をできれば、脳の機能が奪われずに済むからです。
治療を開始するまでの時間に応じて、薬物療法か手術が行われます。
薬物療法
脳梗塞が起きて比較的に短時間であれば、血を固まりづらくする「t-PA(ティーピーエー)」と呼ばれ薬が投与されます。
t-PAの利用する際には、いくつもの条件に適合する必要があります。たとえば、次のような条件があります。
- 症状が出てから4時間30分以内
- 軽微な症状ではないこと
- すぐに改善しないこと
- 手術を受けて一定期間が経過していること など
条件を満たさない場合や、改善を期待できない場合は手術が行われます。
緊急手術
緊急手術ではカテーテルを利用して手術が行われます。
足の付け根から血管にカテーテルを通して、頭部の血管に到達させて血管のつまりを解消します。
そのため、頭蓋骨を開かずに手術が可能です。
血管のつまりを解消する際には、カテーテル内に通したワイヤーで血栓を粉砕したり、血栓溶解剤を注入して溶かしたりします。
血栓が解消されない場合は、バルーンカテーテルで血管を広げたり、ステントと呼ばれる金属コイルで閉塞した血管を開通させたりします。
脳出血
脳出血の場合は、まずは血圧を下げる薬で、高血圧に対する治療を行われます。または、出血を止めるための薬が投与されることも。
出血量が多い場合は、頭蓋骨を開いて血の塊を取り除く手術が実施されます。
クモ膜下出血
クモ膜下出血は、血管の瘤(コブ)である脳動脈瘤が破裂して発症します。そのため、破裂した箇所を塞ぐための手術が行われます。
脳動脈瘤の塞ぎ方は「開頭クリッピング術」「血管内コイル塞栓術」の2パターン。それぞれ、分かりやすく説明します。
開頭クリッピング術
開頭クリッピング術は、頭蓋骨の一部分を取り外して行う手術です。
動脈瘤で膨らんだコブの部分を血管の外側からクリップで止めて、コブの中に血液が入らないようにします。
血管内コイル塞栓術
血管内コイル塞栓術は、足のつけねからカテーテルを通して行われます。
カテーテルを脳に到達させ、動脈瘤のコブのなかをコイルで満たして血液が入らないようにします。
脳卒中の後遺症
脳卒中の主な後遺症は、脳の損傷部位や脳が虚血状態だった時間に応じて重症度や障害の種類が変わります。
はじめは軽症でも、脳卒中を繰り返すうちに、寝たきりになる場合もあるため注意が必要です。
たとえば、運動障害や感覚障害、言語障害などが脳卒中の代表的な後遺症。
日常生活への影響も大きいため、後遺症の回復を促すためのリハビリへの取り組みが重要です。
【医師監修】脳卒中の後遺症とは|言語障害と痙攣、めまいなどの症状はある?確率は?
脳卒中の予防法
脳卒中の予防法は次のとおりです。
- 血圧の管理
- コレステロールの管理
- ストレスコントロール
- 脳ドッグを受診
- 適度な運動
それぞれの予防法について詳しく説明しますので、脳卒中を防ぐためにも参考にしてください。
血圧の管理
血圧を管理する場合、次の点に取り組むとよいでしょう。
- 血圧を毎日計って、高血圧が続かないように意識する
- 喫煙や過度の飲酒、塩分の取り過ぎなどの高血圧になる要因を避ける
- すでに血圧が高い場合は、検査を受けて微小出血が見られないかを確認する
脳卒中を予防するには、血圧の管理と生活習慣の改善が重要です。
とくに、塩分の取り過ぎには注意してください。塩分を減らすためには、出汁などをうまく使い料理に工夫を加えるとよいでしょう。
コレステロールの管理
コレストロールを摂り過ぎると、動脈硬化になるため、脳卒中のリスクが高まります。
とくに悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロールや、中性脂肪が必要以上に増えると、脳卒中を発症しやすくなります。
コレステロールをコントロールするためには、まずは肉の脂身や卵、甘いお菓子の大量摂取を控えることが大切です。
たとえばバターやラード、肉の脂身に含まれる飽和脂肪酸の取り過ぎは、コレステロールの過剰摂取につながります。
一方で、魚の脂肪に含まれるEPAやDHAは、LDLコレステロールを抑えるといわれています。
そのため、悪玉コレステロールが高い場合は、肉よりも魚中心の食事にするとよいでしょう。
また適度に有酸素運動をして、脂肪を燃焼させることも大切です。
【医師監修】脳梗塞の効果的な予防法とは|再発の確率は?食べ物や水分補給の重要性を解説!
ストレスコントロール
ストレスを溜めると、心拍数が高くなり血圧が上昇します。
そのため、規則正しい生活を送り、十分に睡眠をとるなどしてストレスをコントロールすることが重要です。
また、悩みや不安について話を聞いてもらうなどして、ストレスを発散することも大切。
無理に解決策を考えなくとも、話に共感してもらだけでも心の負担も減らせます。
脳ドッグを受診
40歳以降は脳ドッグを受診して、脳卒中がおこる兆候の早期発見に努めるようにしましょう。
健康な場合でも、2~3年に1度は脳ドックを受診した方がよいといわれています。
症状が現れない脳梗塞である「無症候性脳梗塞」の場合は、1~2年に1度の受診が推奨されています。
適度な運動
日本生活習慣病予防協会によると、週4日のウォーキングなどで適度な運動をすると、脳卒中のリスクを下げられるとのことです。
運動不足の人は、週4日以上の運動を行った人にくらべて脳卒中になる割合が、20%高いことがアメリカの心臓学会で発表されています。
また同学会では、運動時間の合計が1週間で150分以上になるようにして、週に2日は筋トレを取り入れることをすすめています。
サイトカイン療法による治療と予防もおすすめ!
脳卒中を予防するためには、バランスの良い食事と適度な運動、定期的な脳の検査が重要です。
もし脳ドッグを受けた際に、すでに後遺症を患っていることが分かった場合は、サイトカイン治療も検討するとよいでしょう。
サイトカイン療法は、脳細胞の回復が期待できる再生医療の技術を応用した治療法です。
ヒト乳歯歯髄幹細胞上清液に含まれるサイトカインが幹細胞を活性化することで、脳細胞の再生を促す可能性があります。
再生医療の中でも、比較的安価で手軽に受けることができますので、ぜひお試しください。
記事監修
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東京慈恵会医科大学卒。
慶應義塾大学での勤務を経て、株式会社ZAIKEN設立。
臨床、訪問診療、企業活動など様々な分野に従事。
2020年よりスマートクリニック東京院長。
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