脳梗塞の後遺症は、生活に与える影響が大きいため、回復が見込めるか気になる方も多いのではないでしょうか?
適切なリハビリテーションや治療を受けると脳梗塞の後遺症が回復する見込みはあります。
本記事では、リハビリテーションで後遺症が回復する理由や、回復に役立つ最新技術を紹介します。脳梗塞を回復させる方法が知りたい場合は、ぜひ参考にしてください。
脳梗塞が回復する見込みはあるのか?
脳梗塞は、適切なリハビリテーションや治療で大きく改善する見込みがあります。
また、その他の手段として考えられるのは、再生医療やロボット技術による治療やリハビリテーションを受けることです。
ここでは、脳梗塞から回復する手段を分かりやすく解説します。
リハビリテーションによる脳梗塞の回復
病院や専門の施設で行われるリハビリテーションを受けると、脳梗塞の回復が見込めます。
脳梗塞の後遺症を回復させるためには、早期にリハビリテーションを開始して、継続することが重要です。
またリハビリテーションの妨げとなる痙縮
(けいしゅく)を緩和させる治療を受けると、
リハビリテーションを効率的に行えるようになり、
さらなる脳梗塞の回復が見込めます。
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再生医療やロボット技術を使った脳梗塞の回復法
現在は、脳梗塞の治療やリハビリテーションに最新の技術を利用できるようになりました。これまで以上に脳梗塞の回復が見込めるようになったのです。
たとえば、再生医療のサイトカイン療法を利用した治療法や、最新ロボティクス技術であるHAL®を利用したリハビリテーションなどが考えられます。
以降ではリハビリテーションで脳梗塞が回復する理由と、最新の脳梗塞治療について説明します。
リハビリテーションで脳梗塞は回復すると期待されています。その理由は、脳梗塞が発症して約3ヵ月までの場合と、約3ヶ月以降の場合とで異なります。
ここではリハビリテーションを開始した期間ごとに、脳梗塞が回復する理由について説明します。
発症後約3ヵ月のリハビリテーションで脳梗塞が回復する理由
脳梗塞の発症直後から3ヶ月くらいまでのリハビリテーションで脳梗塞が回復する理由は、脳の神経組織が破壊される前に脳血流が再開されるからです。
早期のリハビリテーションにより、ダメージを受けながらも再生可能な脳細胞に血液が送り込まれます。
そうすると、神経細胞が回復し脳は機能を取り戻すことで脳梗塞による症状が改善するといわれています。
つまり脳梗塞を発症後の約3ヶ月間にリハビリテーションに励むことで、脳梗塞が回復しやすいといわれいます。
一方で脳梗塞を発症してから約3ヶ月以降は、回復が停滞するといわれています。
しかし神経の可塑性により、脳梗塞を発症してから3ヶ月以降もリハビリテーションによる脳梗塞の回復は見込めるでしょう。
次に、脳梗塞発症約3ヶ月以降の回復理由を説明します。
発症から3ヶ月以降のリハビリで脳梗塞の回復が見込める理由
発症から3ヶ月以降のリハビリで脳梗塞の回復が見込める理由は、神経に可塑性と呼ばれる性質があるからです。
可塑性とは、学習や練習などを通して、新しい神経ネットワークが脳内に構築され物事を覚えたり、新しいことをできるようになったりすることを指します。
たとえば、神経に可塑性があることで、子どもは箸の使い方を練習すれば、箸を使ってご飯を食べられるようになります。
はじめはぎこちなかった箸の使い方が、スムーズになる理由は、神経の可塑性により新しい神経ネットワークが作られるためだといわれています。
脳に障害を負った場合も同じように、リハビリテーションを通して身体の動かし方などを練習すると、神経の可塑性により新しい神経ネットワークが構築されるのです。
新しい神経ネットワークが障害を負った神経を補い、脳梗塞による後遺症できなくなった動作ができるようになる可能性があります。
何もしない場合は神経の可塑性が発揮されず回復は見込めないでしょう。そのため、適切なリハビリテーションの継続が大切なのです。
ここでは、後遺症の回復過程における脳梗塞のリハビリテーションを簡単に解説します。
急性期リハビリ|発症後約3ヶ月まで
急性期リハビリテーションは、寝たきりの防止や後遺症の軽減を目的のリハビリテーションです。
関節を動かす訓練や立つ座るなどの訓練、食べたり飲みこんだりする訓練などが行われます。
また脳梗塞の発症から48時間以内にリハビリテーションを開始した方がよいといわれています。
回復期リハビリテーション|発症後の3ヶ月~6ヶ月くらいまで
回復期リハビリでは、自分でベッドから車いすに移動したり、トイレや食事をしたりするなどの日常生活動作を練習をします。
維持期リハビリテーション|発症から6ヶ月以降
維持期リハビリは生活期リハビリとも呼ばれ、病院ではなく自宅中心で行われます。
回復期リハビリテーションで回復した機能を維持するため、自宅などでリハビリテーションを続けます。日常生活またはリハビリテーションの妨げとなる手足のつっぱり(痙縮 けいしゅく)があらわれる場合には、やわらげるための治療があります。
次に、リハビリテーションの回復を見込めるといわれている再生医療の技術を紹介します。
再生医療により幹細胞の働きを活性化させると、障害を受けた脳神経細胞の回復を促せます。
中でも、ヒト乳歯歯髄幹細胞培養上清液を利用したサイトカイン治療は、脳梗塞の回復が期待できる再生医療技術です。
ここでは、幹細胞について説明したあとに、サイトカイン療法で脳梗塞の回復が期待できる理由について解説します。
幹細胞とは
幹細胞は、次の2つの機能を持つ特殊な細胞です。
- 自分と同じ細胞を作る自己複製能
- 自分とは異なる細胞を作る多分化能
幹細胞は自己修復能や多分化能を備えているため、脳梗塞で障害された脳神経細胞の回復を促進する可能性があります。
またサイトカインと呼ばれる生理活性物質の分泌により、幹細胞自体の活性化も可能です。
サイトカイン療法は、サイトカインを含むヒト乳歯歯髄幹細胞培養上清液を利用して、幹細胞を活性化させることで脳梗塞の回復を目指す治療法です。
次に、サイトカイン治療に使われるヒト乳歯歯髄幹細胞培養上清液について説明します。
ヒト乳歯歯髄幹細胞培養上清液とは
ヒト乳歯沈幹細胞培養上清液とは、幹細胞を培養する過程で生じたサイトカインを含む上澄み液です。
細胞を除いた培養液を集めて作られます。
神経細胞の再生に関わるのは、サイトカインの中でも成長因子と呼ばれる生理活性物質です。
成長因子を含むサイトカインには、幹細胞を活性化する働きが備えられています。
中でもヒト乳歯歯髄幹細胞培養上清液には、脂肪由来や臍帯由来の幹細胞培養上清液よりも上質なサイトカインが含まれるのです。
上質なサイトカインで脳梗塞の回復に期待
サイトカインとは、細胞間の情報を伝達して細胞に個別の機能を持たせたり、能力を発揮させたりするたんぱく質の総称です。
中でも、細胞を増殖させる機能をもつサイトカインは、成長因子と呼ばれます。
その成長因子にも、上記グラフに示すように、さまざまなものが存在します。
中でもHGFは多機能な成長因子で、組織の修復や形態形成、血管の再生など脳梗塞の回復に役立つ機能を豊富に備えているのです。
ヒト乳歯歯髄幹細胞培養上清液は、他の上清液に比べると多くのHGFを含んでいるため、脳梗塞の回復への期待値も高いといえます。
次に、ロボットを使った最新のリハビリについて見ていきましょう。
脳卒中の後遺症回復をサポートするリハビリテーション補助ロボットとして、装着型サイボーグHAL®が注目されています。
すでにHAL®を導入してリハビリを実施する医療機関もあり、リハビリ効果に関する論文も発表されているのです。
ここでは、HAL®について詳しく解説します。
装着型サイボーグHAL®とは、HAL®を使った脳神経・筋系の機能改善を行うリハビリテーションプログラム「Neuro HALFIT®」とは
装着型サイボーグHAL®とは、神経を介して脳から筋肉へと送られた信号をもとに、体の動きをサポートをするロボットです。
神経を通して送られる信号を読み取り、人間がどのように身体を動かしたいのかを検知して目的とする動作につなげます。
ロボットの動力により、体を動かす際の負担を軽減できるため、脳卒中などで筋肉が麻痺した患者のリハビリに有効活用されています。
なお、身体機能の低下や脳卒中 (脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患) 、脊髄損傷などによる後遺症により、起居動作が難しくなった方に対して、HAL®を装着して脳神経系の活動ループを賦活化することで、脳神経・筋系の機能改善を促すプログラムは「Neuro HALFIT®」として運用されています。
従来のリハビリで効果を感じなくなってしまった利用者でも更なる改善が期待でき、身体機能の改善を実感することで気持ちの変化も期待できるものです。
装着型サイボーグHAL®を使った「Neuro HALFIT®」はリハビリテーションで活躍
装着型サイボーグHAL®を使ったリハビリテーションプログラム「Neuro HALFIT®」は、現在、脳血管疾患により、足の筋肉が麻痺して歩行ができない方のサポートを中心に、歩行訓練や階段訓練などのリハビリテーションで有効活用されています。
「Neuro HALFIT®」プログラムにより、麻痺で衰えた筋肉を使えるようになり、患者の歩行訓練の成果も向上しているようです。
なお、リハビリテーション施設として中心となっているのが、全国に展開されているロボケアセンターとなり、専門スタッフと相談しながら適切なリハビリテーション計画をして進めています。
次に、ここまで紹介した再生医療とロボット技術を組み合わせた治療を紹介します。
2021年、再生医療「サイトカイン治療」と、装着型サイボーグを使用したHALを使った脳神経・筋系の機能改善プログラム「Neuro HALFIT®」とを組み合わせ、脳卒中後遺症患者の機能改善を目指すオリジナル治療プログラム「SHARE」を、当クリニックとMOVETEX(株)とで共同開発しました。
サイトカイン治療により、根本的な脳内神経の改善を見込み、Neuro HALFIT®プログラムにより、機能改善スピードを加速させ、後遺症からの回復期間を短くすることが期待できます。
両社の知見を組み合わせ、脳梗塞や脳出血などの脳卒中後遺症に苦しんでいる患者と家族の生活改善、広くは社会へのさらなる貢献を目指します。
「SHARE」プログラムの実施期間
本プログラムは、3か月を1クールとして、月に1回のサイトカイン治療と、週に1回から2回のNeuro HALFIT®(下半身専門)を組み合わせて実施します。
当クリニック医師とMTXのHAL専門スタッフが連携し、患者の症状に合わせて、最適な治療プログラムを提案します。
従来リハビリ効果は限定的とされてきた脳卒中後遺症の改善を見込み、患者の社会生活復帰をサポートします。
脳卒中後遺症の回復には、治療だけではなく適切な時期に適切なリハビリを行うことが非常に重要です。
今回、当クリニックとMOVETEX社が共同で開発した、「SHARE」プログラムは、脳神経・筋系双方にアプローチしたリハビリテーションプログラム「Neuro HALFIT®」をサイトカイン治療と並行し、継続して行えることで機能改善の相乗効果が期待できるプログラムです
まだまだ臨床はこれからですが、患者様に寄り添いながら、脳卒中後遺症の患者様のQOL改善に取り組んでいきたいと思っています。
スマートクリニック東京とMOVETEX社が共同で開発した「SHARE」について興味がある場合は、次のページもご覧ください。
脳卒中後遺症患者向けに機能改善プログラム「SHARE」を10月1日より提供開始
記事監修
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東京慈恵会医科大学卒。
慶應義塾大学での勤務を経て、株式会社ZAIKEN設立。
臨床、訪問診療、企業活動など様々な分野に従事。
2020年よりスマートクリニック東京院長。
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