痙縮にはITB療法が効果的だといわれています。
そのため、痙縮を患っているご本人やご家族の中には、「どれくらい効果があるのか知りたい」「どのような治療方法であるのか知りたい」と考えている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、ITB療法の治療内容や効果について詳しく解説。ITB療法以外の治療法についても紹介します。
効果的な脳卒中後の痙縮治療を受けるための、ヒントとしてお役立てください。
痙縮(けいしゅく)とは筋肉が緊張しすぎて、手足が動きにくかったり、勝手に動いてしまう状態のことで
ここでは、痙縮の症状や治療が必要な理由について説明します。
痙縮の症状
痙縮になると、手の指や手首、肘、足先の指などが曲がったままになります。脳卒中の場合、まずは筋肉が脱力する弛緩性麻痺になり、その後に痙性麻痺による痙縮になることが多いです。
痙縮になると手足のつっぱりで日常生活の動作に支障をきたします。
たとえば、手のつっぱりで服の着脱がしにくくなったり、足のつっぱりで歩きづらくなったりして日常生活に与える影響も大きいです。
足の指が曲がったままの状態で体重がかかり、痛くなることもあります。
痙縮の治療が必要な理由
痙縮は身体を動かしづらくなるため、リハビリテーションの妨げとなる上に、関節を動かせない状態が長引くと拘縮になるケースもあります。拘縮とは、筋肉や関節が固まった状態です。
痙縮の治療を受けるとリハビリの際に、関節を動かしやすくなるため、拘縮の予防効果を高められます。代表的な痙縮の治療法に、ITB療法があります。
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ITB療法は、バクロフェン髄注療法や髄腔内バクロフェン療法と呼ばれます。脳卒中や脳性まひの後遺症である痙縮に対する治療法です。
バクロフェン(商品名:ギャバロン髄注)と呼ばれる筋弛緩剤を、腹部のポンプから常に脊髄腔に注入します。
腹部のポンプは手術で埋め込まれます。ここではITB療法の効果や治療法、副作用について解説しますので、参考にしてください。
ITB療法で期待できる効果
ITB療法で期待できる効果は次のとおりです。
- 固くなっていた下肢の筋肉・関節をやわらかくし、動かしやすくする
- 筋肉のけいれんをおさえる
- 胸やおなかの締め付け感をおさえ、呼吸を楽にする
- 痙縮による痛みをやわらげる
- 睡眠障害を改善する
- 日常生活動作を改善する
ITB療法を受けると、痙縮で過度に緊張した筋肉を緩める効果が期待でます。しかしITB療法は、痙縮の原因を取り除くわけではないため、治療をやめれば痙縮がもとに戻ります。
そのためITB療法は、薬剤の投与を続けることで、日常生活における動作の改善が可能です。
治療方法
ITB療法の流れは次のとおりです。
- バクロフェンが痙縮に効果があるのか個別にスクリーニング検査が行われる
- 効果がある場合は、バクロフェンを注入するためのポンプを腹部に埋め込む手術が行われる
- ポンプの中のバクロフェンの補充は1~3ヶ月に1回行われる
- ポンプの電池が切れるため、5~7年でポンプの交換が行われる
ITB療法は誰にでも効果があるわけではありません。そのため事前にスクリーニング検査が行われ、効果がある場合にのみ実施されます。
副反応
副反応はポンプの異常や薬剤切れで起こります。
たとえばポンプの異常で、髄腔内に投与されるバクロフェンの量が少なくなった場合は離脱症状がおこります。
またポンプの故障による過剰投与でも、さまざまな症状に見舞われるのです。
その他にも、ポンプやカテーテルを埋め込んだ部分に感染症が起きたり、ポンプやカテーテルがずれて髄液の漏れなどが起こることがあります。
離脱症状や過剰投与による症状について説明しますので、異常がある場合は、すぐに病院を受診するようにしましょう。
離脱症状
離脱症状は、ポンプシステムの不具合で薬が正常に髄腔に運ばれなくなった場合に起こります。
次のような離脱症状が考えられます。
- 痙縮の症状の悪化
- 原因がないのに、高熱が出る
- かゆみやチクチク、ピリピリなどの感覚異常
- 血圧低下によるふらふら感や起き上がれない状態
- 落ち着かない、イライラするなどの精神状態の変化
過剰投与による症状
ポンプシステムの異常で、薬が過剰に髄腔内に注入されておこる症状です。薬剤が過剰投与されると、次のような症状が起こります。
- 夜でもないのに眠ってしまうほど、異常な眠気に襲われる
- 意識がもうろうとして、反応がなくなることもある
- 呼吸が弱くなったり、脈拍が遅なったりして、体温も低下する
- 全身の筋肉が緩んで、ぐったりする
- けいれんを起こしたり、幻覚や錯乱などの精神状態の異常が出たりする
ここでは、ボツリヌス療法やFESなどのITB以外の治療法を紹介します。
ボツリヌス療法
ボツリヌス療法は、ボツリヌスキトシンと呼ばれる成分を含む薬を筋肉内に注射する治療法です。
ボツリヌスキトシンには、筋弛緩作用や交感神経の働きをブロックする作用があるため、痙縮の治療にも役立ちます。
FES(機能的電気刺激)
FES(機能的電気刺激)は麻痺した手足の筋肉に、コンピュータ制御された電気刺激を与えて、関節を伸ばしたり曲げたりできるようにする治療法です。
健常者が身体を動かす際に、脳から送られる電気信号による筋肉の収縮に近い状態を再現します。
FESを使ってリハビリに取り組むことで、慢性期にある痙縮患者の運動の改善が見られたとの報告もあります。
脳出血や脳梗塞後の後遺症における痙縮の治療には、サイトカイン療法もおすすめです。
サイトカイン治療では、脳の幹細胞の働きを活性化させるヒト乳歯歯髄幹細胞培養上清液を点鼻投与します。
ヒト乳歯歯髄幹細胞培養上清液に含まれるサイトカインの作用で幹細胞が活性化されると、脳細胞の再生促進が期待できるのです。
点鼻投与とは、鼻に薬液を垂らして体内に取り込むことで、ITB療法やボツリヌス療法などの治療法と比べると、比較的に簡単に受けらる点が魅力です。
また、脳の障害に直接アプローチできる治療法であるため、効果の持続も期待できます。
サイトカイン治療に興味がある場合は、スマートクリニック東京にぜひご相談ください。
記事監修
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東京慈恵会医科大学卒。
慶應義塾大学での勤務を経て、株式会社ZAIKEN設立。
臨床、訪問診療、企業活動など様々な分野に従事。
2020年よりスマートクリニック東京院長。
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